糸の撚糸に杢撚りというものがあります。

本来の杢という言葉は木の木目を意味していたかと思いますが、ここでいう杢撚りというのは複数の色を組み合わせた撚糸のことを意味しています。

なので使用するカラーは赤でも青でもピンクでも基本的には何でもありです。

何でもありで自由に色を組み合わせるというと楽しそうな雰囲気なのですが、実際その作業をするとなるとこれが中々大変です。

3本撚糸の糸を50色のカラーの組み合わせで作る場合、単一色の3本撚糸を含めると50の3乗で最大125000通り作ることが出来ます。

こんな途方もない作業をゼロベースで始めると埒が明かないので、大抵の場合何か参考になるものを探します。

デザイナーの人ならイタリアの糸メーカーのファンシーヤーンなどを参考にする方もいるかもしれません。

けれども当社では基本的に他社の糸を真似て作ることはしないので、杢撚りの配色も自前で考えます。

その際、様々な着想で色を組み合わせていくのですが、とくに糸番手の太いものを組み合わせるときに新印象派やポスト印象派の画家たちの絵が非常に参考になります。

新印象派やポスト印象派についての詳しい説明はここでは省きますが、画家の名前を挙げるとなると最も有名なのはヴィンセント・ヴァン・ゴッホでしょうか。

その他ポール・セザンヌやジョルジュ・スーラ、ポール・シニャックなど。

ポスト印象派というからには印象派の流れに対して新しく発生した芸術のスタイルです。

印象派の画家たちが用いた色彩分割という手法を、点描などの手法に発展させていく過渡期がポスト印象主義の中心的手法になるかと思います。

色彩分割という言葉が示すとおり、印象派の画家たちは目に見えている色の解像度を少し落としたような方法で彩色します。

たとえば、黄色や緑、アイボリーなどの色をやや粗めのタッチで塗り分けて色を重ねることで黄緑色を表現するといった方法です。

ポスト印象主義ではさらに抽象化されたスタイルが発展し、緑や黄色にピンクやオレンジなどの色をちりばめて、より写実から離れた表現方法がとられるようになります。

この自由に色を配置していく表現技法のベースはおそらく「私はこんな色の組み合わせが好きなんです」という画家の趣味性であったりエゴであったりするのだと思います。

世の中がどんな色で構成されているかとか、そんなのもうどうでもいいじゃん!この色とこの色の組み合わせが綺麗なんだからそう塗ったらいいじゃん!みたいな感じで自由に彩色されています。

この組み合わせがときに奇抜であったり意外な組み合わせであったりして、糸の色を組み合わせるときにとても参考になります。

空の色が深い紫にグレーにオレンジで構成されていたり、草原の色がアッシュグレーと薄いグリーンとピンクで塗られていたり。

印象派の画家に比べて色彩もやや奇抜なものが多い割りに抽象的になりすぎず、ちょうど良い感じに色がちりばめられている。

自由な感性で組まれたこれらの配色をそのままニットにしたら綺麗なものが出来るかなと思い、私は糸の色の組み合わせを考えるときにこの時代の画家の絵を時々参考にしています。