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引き続き、当社のものづくりを業界内でどうやって差別化していくかというお話です。

前回の最後にキーワードはスピードと書きました。

当社が商品を販売するまでの流れは以下のような感じです。

商品企画

試作

資料作成

客先提案

サンプル受注~デリバリー

本生産受注~デリバリー

商品企画についてはいろんなパターンがありますが、まずは従来から自社で取り扱っている商材をアレンジすることが多いです。

たとえば自社にリネン100%の素材があり、他社さんから紹介されたウール100%の糸があるとすると、まずはそれらの糸を1本ずつ撚り合わせてリネンウールの糸を試作してみる。

それ以外にリネン2:ウール1にしてみたり、撚糸した糸を更に数本束ねて撚糸してみたり、コットンを足してコットンリネンウールの糸にしてみたりといったアレンジを加えていき、最終的に一番良さそうなものに絞り込んでいきます。

このやり方のほかにも今まで当社で取り扱っていなかった新しい商材をベースに、特殊な撚糸方法や染色方法を加えてオリジナルの商材に仕立てていくこともありますし、紡績メーカーさんに依頼して原材料から作りこむこともあります。

いずれにしてもベースとなる素材を最初に決めて、撚糸加工でアレンジしていくのが当社のスタイルです。

色々なパターンを試して良さそうな糸が出来たら、それらをカラーカードにまとめるか一先ず1色だけ風合い確認用の見本を作って客先の方たちにプレゼンするか検討します。

カラーカードにまとめるとなったら20色並べるのか30色並べるのか、単一色ばかり並べるのかミックストーンで並べるのか様々に検討し、基本的な構想がまとまったら試作に取り掛かります。

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ちなみにカラーカードというのはこんな感じのもので、素材の風合い見本と色バリエーションを一枚のパネルで参照できるようにした資料のことです。

たとえば30色のカラーカードを作成するとなったら、大体その倍の60色程度作ってその中から良さそうな色を30色抽出します。

作ったカラーカードをアパレルのデザイナーさんに見ていただき、気に入っていただいて何か試作する運びとなったらセーターメーカーさんと打ち合わせして必要量のサンプル糸を作成します。

当社がデリバリーしたサンプル糸で試作されたセーターは、アパレル企業の営業やマーチャンダイザーの方たちによって実際に店頭で販売するかどうか検討され、本生産の進行が決まったらセーターメーカーさんから本発注をいただきます。

糸を染めて撚糸して、客先指定の場所に納品したらひとつの仕事が完了します。

スピードという観点で言いますと、当社は既に最初の商品企画からサンプルデリバリーまでの流れを短サイクルで行うためのスキームを作っています。

たとえば商品企画については基本的に私自身ともう一人の社員の2名だけで行っており、企画のベースとなる紡績メーカーさんや染色工場さんたちとの打ち合わせには二人とも必ず参加し、どちらかがアイデアを出したらすぐさま二人のうちどちらかもしくは二人同時に試作の作業を始められるように情報共有しています。

試作に関する設備については撚糸機、編み機、染料や助剤などの薬剤等全て社内に備えていて、試作した糸はすぐさま染色や洗濯等の試験を行い、その場で編みたてることが出来ます。

商品企画のアイデアが出てから試作・物性試験・試験編み立てまで大抵1日~2日で済ませてしまうことがほとんどです。

何点か試作した結果作成する商品が決定し、カラーカードにまとめる段階になった場合、約60色ほどの色バリエーションの撚糸+編み立ての見本を作るとして、この作業も3日~4日あれば出来上がります。

そこから30色を選び出し、それを専用の台紙に貼り付けて資料にまとめるのに1日~2日。

企画内容が決定してからカラーカード作成まで早ければ1週間程度、長くかかっても2週間ほどでプレゼン用の資料は完成します。

そうやって出来た資料をデザイナーさんに提案し、気に入っていただいた結果セーターを編んでみようということになった場合には1kg~2kg程度のサンプル糸が必要になります。

これについても自社内に撚糸機がありますので、早ければ2日~3日程度、遅くとも1週間~10日以内にサンプル糸はデリバリーします。

と、ここまでサラッと書きましたが、実際に商品企画からサンプル糸作成までをこれほど早いスパンで行える糸屋さんは少ないのではないかと思います。

ほとんどの糸屋さんは撚糸や編みたてを外部の工場に委託しているので、糸を1kg試作して2m編むというだけでも3~4週間ほどかかるのではないでしょうか。

3週間ほど待って出来上がった編地を見て、気になる点を修正するためにまた撚糸工場さんに試作を依頼して編み立てするために3週間経過する、といったことを何度か経た上で企画が決定するという感じでしょうか。

当社も創業当初はそういった形で外部の工場さんに委託してサンプル作成をしていましたが、そのスピードをもっと早めるために2013年に小型の撚糸機を購入し、その後毎年のように糸巻き機や撚糸機を買い足していき、試作の設備を充実させてきました。

その結果、商品企画からサンプル糸の出荷までのスピードはかなり早くなったのではないかと思います。

そこで、これから更にそのスピードという強みを生かすためには何が必要か。

前回のブログを含めて今まで何度も書いてきたように、本生産を委託するための加工場さんが年々廃業しているので、本生産のデリバリースピードを早めるというのはこれからもっと難しくなります。

散々悩んだ結果、本生産の撚糸機も社内に導入することにしました。

つまり、最初に書いた商流の最後の行、

「本生産受注~デリバリー」

の部分ももっとスピードアップしようという結論に至ったわけです。

企画からサンプル作成のスピードが早いことが当社の強みなのであれば、企画から本生産までの全てのスピードを早めることが自社の強みを更に伸ばすことになるだろうと考えてのことです。

当社の商品企画、サンプル作成、本生産、全てのスパンが短ければ、アパレル企業の方々がデザインを企画されるための時間ももっと多く取れるでしょうし、納期はあまり無いけれど現行シーズンにどうしても店頭に出してみたいというデザインが出来たときにその実現可能性が上がるはずです。

そんなわけで、当社は今社内に備えている撚糸機の約6倍の生産キャパシティを持つ、本生産用の撚糸機を購入しました。

実際の稼動は今年の夏ごろになるかと思いますが、そのために今着々と準備しているところです。

自社の強みをとことん伸ばす。

それが差別化のひとつの答えなのかなと思っております。

そして、自社内で最終製品まで作成する以上、これから当社は本格的に糸メーカーになります。

これまではある意味糸の企画会社と糸製造業の中間のような存在でしたが、そこから進化して本格的に糸メーカーになるということに決めました。

ただ本生産の機械を持っただけでメーカーになったといえるほど甘いものではないと思います。

その機械を効率よく運用し安定した品質を維持できる体制を作る、ということが出来てこそメーカーだと思います。

もちろん今まで積み上げてきた糸の企画力や糸作成のノウハウにもますます磨きをかけていくつもりです。

糸メーカーとして、自社の新しい形を作る。

これが創業20周年の節目に立った当社の今の目標です。