先日とある国内紡績メーカーの現場責任者の方と一緒に撚糸工場さんに伺って打ち合わせをする機会があり、全員が自社に設備を持っている現場バリバリのメンバーだったので、かなり専門的な用語が飛び交う会話が続き久しぶりに良い勉強になりました。

その打ち合わせの場で日本製品よりも海外製品の方が優れているケースが増えているという話題が何度か上りました。

今の日本では繊維製品やアパレル製品だけでなく様々なものが中国を中心とするアジア生産にシフトされているのは多くの方が知るところなので、今更海外製品の良さについて語ることは特に珍しいことではないと思います。


けれども、先日の打ち合わせで従来よりももっと基幹部分の川上のものづくりが海外にシフトしているのだと感じることがあり少し考えさせられました。


中国やその他アジア諸国での生産について従来目的とされてきたことは主にコストダウンで、大量生産をより安価に行うために安価な労働力を頼って海外にシフトするということが中心でした。


言い換えれば、多少高いコストを支払えば同じものが日本国内でも生産できるということを意味していました。かなり大雑把に言うと、価格を抑えたいアパレルは海外生産、高級品は国内生産という単純な図式です。


しかし昨今国内の繊維やアパレルメーカーの廃業が続き、特定の技術が途絶えてしまうことも多く、ものを作ること自体が出来ないケースも増えてきています。


それでも川上と呼ばれる原料製造側に近い産業の分野ではまだまだ日本企業に優位性があるというようなことがしばしば語られてきました。ものづくりの基幹部分の技術ではまだまだ日本も負けていないというような語り口です。


ところが実際業界の川上に位置する紡績メーカーの現場の人から「我々には造れないけど中国に行けば手に入る商品ですよ」とか「うちでは作れないけど輸入糸なら手配可能ですよ」などという台詞が度々出てくるのを聞くと、いよいよ基幹部分の技術分野でも勝てなくなっているのだなと実感します。


日本のメーカーの設備は何十年も前の機械なので作れるものに限りがある。けれども中国の設備は最新式なのであれもこれも出来るというような話が当たり前のように語られる。

機械があればもしくはパーツがあれば機械を改造して作れますよ、やり方は当然知っていますよ、けれどもパーツを作るメーカーは国内にはもうないですよ、というような話も多いです。


以前にもこのブログで書きましたが、紡績工場というのは非常に大規模な設備を必要とする産業です。

そのため一度設備を手放したり工場を廃止したりすると、新規に設備投資したり工場を開設したりすることは非常に困難になります。ただでさえ収益性の下がっている繊維産業で大規模設備の新規投資はほぼ不可能といえるでしょう。


しかしその紡績メーカーがこの20年ほどの間に全国各地の製造拠点を統廃合し、設備を海外移転したり廃棄したりして縮小し続けてきた結果、いよいよ技術レベルでも海外に追い抜かれつつあるという状況です。


それについてなんとなくまずいことになっているなとは感じていましたが、現場の責任者の方との会話でより強くその危機感を感じた次第です。


ここ数年どういうわけか大手アパレルの一部の人たちが国内回帰とかメイドインジャパンとか言い出している話をよく聞きます。


いよいよ国内の繊維産業の基幹部分もスカスカの骨抜きになりつつあるのかなと感じるにつれ、川上と川下のこのギャップは何なのだろうか、現状を知っていてメイドインジャパンと仰っているのですか?と不思議に思いますし、なんだか暗い気持ちになってしまいます。