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当社は主にセーター用の糸を扱っています。

セーター用の糸というと人によっては手芸店に売られている手編み用の糸を想像されるかもしれません。

それに近い糸もありますが、当社の糸はどちらかというともう少し細くて形状もシンプルなものが多いです。

そして何よりも春夏素材とされるコットンやリネンが中心なので、毛糸といわれるフワフワの糸のイメージとはかなり異なるラインナップを揃えています。

その春夏素材のひとつにギマ糸と呼ばれる樹脂加工糸があります。

ギマ糸とは何かと申しますと、コットンなどの糸をビスコースの樹脂で表面コーティングしてサラッとしてドライな風合に変えてしまう加工を施した糸のことです。

ギマという言葉は「擬麻」という言葉をカタカナ表記したもので、文字通りイミテーションの麻を意味しています。加工された糸の風合がまるで麻糸のようにドライタッチになることからそう呼ばれるようになりました。

このギマ加工が始まったのは滋賀県の旧神崎郡能登川町(現東近江市)です。

元々滋賀県の湖東地域は麻布の産地で「近江麻」という言葉もあるくらい和装の世界では良く知られていました。この麻布用の糸は大麻や苧麻と言われる素材が中心で、それらの糸で織られた生地は「近江上布」と呼ばれて珍重されていました。

この産地で糸表面の毛羽を抑える加工をルーツとして始まったのがギマ加工の起源とされています。

織物に詳しい方ならご存知だと思いますが、糸表面の毛羽を抑えてなおかつ糸を補強するために糸に糊付けを施してから織り上げるというやり方は昔から定着している技術です。

糊付けされた糸で織られた生地は非常に硬い風合になりますが、この糊は織り上がった生地を洗浄すれば落ちるように調合されているので素材本来の風合は損なわれません。

その糊を洗浄や染色後にも落ちないような材料に替えれば、糊付けされたものと同じ風合のサラッとした生地を長期間維持できるはずだと考えて考案されたのがビスコース糊です。

ビスコースというのは主に針葉樹などを原料としたパルプを薬剤で溶解させて作る樹脂で、化学的に固化させてしまうと硬くサラッとした風合に変わる特性を持っています。

この樹脂を繊維表面に固着させることで毛羽のある柔らかな糸をサラッとした清涼感のある風合に変えることができるわけです。

この加工の利点はコットンやその他の糸の風合を麻のようにドライに変えられることですが、それ以外にもうひとつ何本かの糸を引き揃えて加工することで幅広いテープのような形状の糸に作り変えられるというメリットもあり、一般的にはこのテープ形状のギマ糸が多く流通しています。

この糸で編まれたニットはドライなだけでなくハリとコシがあって軽くなるのも特徴で、夏物のニット素材として非常に人気が有ります。

難しいお話はともかく、簡略化していってしまうとギマ糸とは「ドライな風合のテープ糸」としてご理解いただければ概ね問題ありません。

当社ではこのギマ加工を用いてコットンギマと綿麻ブレンド糸のギマをストック販売していますが、せっかく糸を在庫して持っているのでこれを元に色んな糸や生地も作っています。

つい最近出来た新作の中にギマハニカム生地がありまして、文字通りギマ糸で編んだハニカム構造の生地です。

ハニカムとはタック編みという方法で蜂の巣状の目を作る編み方で、表面に六角形の立体的な編み目が出来ます。
このハニカム柄をギマ糸で編むことで編み目の立体感が更に強調されてシャキッと目のたった軽くてドライな生地になるのです。

ギマの弱点として糸が硬いために非常に編みにくいという問題があり、このハニカム柄を作成することもなかなか簡単ではないのですが、編み立て工場さんのご協力もあり製品化することが出来ました。

ハニカム柄はその編み目の構造上生地の隙間が多く通気性も良いのでギマ糸の持っているドライな風合との相性も抜群です。

ご興味のある方は一度お問い合わせください。