衣料用途の繊維にはいろんな種類があります。

天然繊維と呼ばれる綿や麻、羊毛、絹などに加えて、合成繊維にはポリエステル、ナイロン、アクリルなどが有り、再生繊維にはレーヨンやトリアセテートなどがあります。

それぞれの繊維を染めるための染料や染色方法は違っていて、その違いによって糸の発色に色んなアレンジを加えたり出来る反面、色んなトラブルが発生したりします。

仕事のミーティングの場で染色についての話題が出ることも多く、最近たまたま同じようなことを聞かれたので備忘録代わりに書いておきたいと思います。

コットンウールの混紡糸について、コットンとウールを染め分けてメランジにしたいという話がありました。コットンが80%ウールが20%でコットンの方を染めてウールを白に残して濃色のメランジにしたいというお話です。

結論を言いますと、これは出来ません。

コットンを染める染料は何種類かありますが、一般的には反応染料と呼ばれるものを使用します。ウールを染める染料は酸性染料と呼ばれるものです。

このコットンを染める反応染料という名前が繊維業界をややこしくしているような気もするんですが、基本的に染料が繊維と染着するとき、染料は繊維と何らかの化学反応をしています。

コットンの反応染料だけが化学反応する染料なのではなくてほとんどの染料が繊維と化学的に反応しています。

ではなぜコットンの染料を反応染料と呼ぶのかといいますと、この反応染料を構成する分子は繊維のもつ官能基と反応する活性基をもっていて、染料と繊維が共有結合と呼ばれる強い結合によって染着出来るからです。強い結合で結びついているから堅牢度が高いです。(堅牢度とは単純に言うと色落ちのし難さのことです。)

非常に簡単に言いますと、繊維と反応する活性基を持っているから反応染料だということですね。

ウールを染色する酸性染料はといいますと、水に溶かすとアニオンになり酸性の液の中でウール原料に存在するアミノ基のカチオンと反応して結合する染料です。

ちなみにアニオンとは陰イオン、カチオンとは陽イオンのことを意味していて、それぞれ負の電荷、正の電荷を帯びた原子のことを意味しています。

カチオンとアニオンが反応する時は正負の電荷によって結びつき、その結合はイオン結合と呼ばれていて共有結合よりも結合力は弱いです。ゆえに堅牢度も反応染料に比べて低くなります。

一般的な反応染料はアルカリ処理したセルロース(綿や麻など植物系の繊維)と反応しやすいのでコットンを染めるのによく用いられます。
ここで間違いが発生しやすいのですが、アルカリ処理したコットンに反応しやすいからといってコットンにだけ反応する染料ではないのです。端的に言いますとこの染料はウールやシルクにも反応します。

コットンの染料として優秀なのでコットン染色に多用されるというだけで、他の繊維も染まってしまうわけです。

先に書いたとおり酸性染料は酸性の液中でウールのカチオンと反応します。セルロースそのものには基本的にカチオンが含まれないのでこの染料は基本的にはコットンに染着しません。

つまり、こういうことです。

反応染料 → コットンとウールの両方に染着する
酸性染料 → ウールに染着する

なので、最初に書いたとおりコットンウールの混紡糸にたいしてコットン側だけを染めてメランジに染め分けることは出来ません。逆に酸性染料だけを用いれば全体の20%だけに色を着けることができるので、薄い色のメランジであれば綺麗に発色させることが出来ます。

この手法はトップ調のメランジカラーを作成する際に一般的に多く用いられています。

じゃあコットンだけに染着する染料を使えばよいじゃないかということにもなるわけですが、堅牢度などの点で一般衣料用途の使用に耐えうるコットン専用の染料というものがほとんど無く実現性に乏しいのが実情です。

最初に書いたとおり繊維には非常に多くの種類があってそれらを染める染料にも色々と種類がありそれぞれに特徴があるので、今回書いたようなことが様々なパターンで発生します。

それぞれの素材についてちゃんとした知識がないと、作り出したい色が出来なかったり発生した問題を解決できなかったりするので繊維と染料の相性についての知識はとても重要です。

この手のお話は他にも色々あって、書き出すときりがないので今後ボチボチ書いていきたいと思います。